Get to know Crime Novel Under Rain

ミステリについて書き散らすブログ

ミステリ(海外)

だからスワンソンを読んだ|ピーター・スワンソン『だからダスティンは死んだ』(2019年)

昔の創元推理文庫にはジャンルを示すマークがあった。本格ミステリは通称「おじさんマーク」、ハードボイルドや警察小説は拳銃マーク、そしてサスペンス・スリラーはなぜか猫マークで・・・というような話は、おじさんミステリファンが集まるとよく出るネタ…

ダイヤモンドと〈木曜殺人クラブ〉は永遠に|リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』(2022年)

気付けばもう4月も月末となってしまった。2023年も3分の1が過ぎたと思うと時間の経つのは早いものであるが、単にそう感じるほどに歳をとってしまったというだけなのかもしれない。「0歳〜20歳までと20歳〜80歳までに体感する時間は等しい」というジャネーの…

エモいミステリ|グレッチェン・マクニール『孤島の十人』(2012年)

「ヤングアダルト小説」と呼ばれるジャンルがある。よく略して「YA」と書かれたりするが、「ヤングアダルト」とは一言で言えば「子供と大人の間の世代」を指し、小説のジャンルとしては大体12から18歳くらいを対象としているとされる。昨年の「このミス2023…

水で割るか、ソーダで割るか|ヒラリー・ウォー『事件当夜は雨』(1961年)

「職人的作家」と聞いて誰を想像するだろうか。ミステリ界で言えば400冊近い作品を残した笹沢左保は間違いなく「職人」であっただろうし、デビューから50年以上の間ハイペースで休むことなく書き続けた西村京太郎も「職人」の鑑のような作家である。海外だと…

余白の残し方|ミステリマガジン2023年5月号

「キングダム」という漫画がある。と言っても読んだことはないのだが、とてもよく売れているそうな。その「キングダム」の作者が先日テレビ番組にて創作の裏側について語っていて、ある登場人物について「三国志では2行程度しか記載のない人物であるが、かえ…

お客さんを選ばせてもらっています|ミシェル・エルベール&ウジェーヌ・ヴィル『禁じられた館』(1932年)

※途中で本作のトリックに触れている箇所があります 筆者がミステリ沼に沈められたきっかけはポプラ社から出ていたアルセーヌ・ルパンシリーズの1冊『ピラミッドの秘密』という本である。エジプトのピラミッドを舞台に怪盗ルパンが大暴れ、悪い大僧官に何度も…

「共感」の時代のノワール作家|S. A. コスビー『頬に哀しみを刻め』(2021年)

久しぶりのエントリとなってしまった。筆無精にとってはデジタルも紙も変わらないということか。改めて反省しつつ、最近読んだ本の感想を適宜アップしていこうと思う。 最近よくチェックしているのがハーパーBOOKSである。早川や創元、文春といった大手老舗…